日本酒の種類や特徴

Sake

日本酒の種類は、成分や製造方法により細かく分けられています。

純米とそれ以外にわける

日本酒は基本的にお米と水から造られますが、100%の成分が米と水だけとは限りません。米と水以外に醸造アルコールが添加されている種類があるのです。醸造アルコールなどを一切添加しない米と水だけで造られている日本酒は「純米(じゅんまい)」とよばれます。

精米歩合で分ける

日本酒はお米の表面部分を削り芯(良質なでんぷん)だけを使って造ります。
一般的には3割程度お米の表面を削りますが、4割以上表面を削り厳選した素材のみを低温でじっくり醸造した日本酒を「吟醸(ぎんじょう)」とよびます。さらにお米の表面を半分以上削ったものを「大吟醸(だいぎんじょう)」とよびます。

  • 純米酒 米・水
  • 純米吟醸酒 米(4割削ったもの)・水
  • 純米大吟醸酒 米(5割以上削ったもの)・水
  • 吟醸酒 米(4割削ったもの)・水・醸造アルコール
  • 大吟醸酒 米(5割以上削ったもの)・水・醸造アルコール
  • 本醸造酒 米・水・醸造アルコール
  • 原酒(げんしゅ)水で薄めていないアルコール度数の高いお酒
  • 生酒(なまざけ)防腐対策の加熱処理(火入れ)をしないものや、一回しか火入れしていないもの(通常は二回加熱処理を行うのが一般的)

この他にも特別本醸造・特別純米酒・にごり酒・搾ったばかりの「しぼりたて」や、夏の間蔵内で貯蔵し秋に出す「ひやおろし」などいろいろな種類があります。

杜氏(とうじ)とは

米と水と麹(こうじ)を主原料に日本独特の製法で作られた醸造酒が日本酒です。
お酒造りに欠かせない要素には、米と水ともうひとつ杜氏があります。

お酒を造る職人のことを蔵人といい、その長である総責任者のことを杜氏といいます。杜氏は酒蔵の最高製造責任者であり、ひとつの蔵に杜氏は一人しか存在しません。
彼らはその出身地から、南部杜氏、越後杜氏、丹波杜氏と呼ばれ、伝統的な日本酒の醸造技術や風習を師弟へ伝承してきました。現在もなお南部杜氏は、日本各地の酒蔵で活躍しています。

岩手県石鳥谷(いしどりや)町を拠点とする南部杜氏(なんぶとうじ)は、杜氏組合としては、全国最大の規模を誇ります。

水は酒の味を大きく左右する

「酒造りは水が命」とよく言われます。
水は日本酒の80%を占める成分で、品質を左右する大きな要因となります。
酒造りにおいて、酒の味を左右する最大の要因は水の硬度です。

  • 辛口のお酒には硬水
    ミネラルが豊富で醗酵の進んだハードな酒(兵庫県の六甲山系を水源とする灘の宮水などが知られる)
  • 甘口のお酒には軟水
    軟水で造れば醗酵の緩い、いわゆるソフトな酒

主な酒米の種類

  • 山田錦 (主産地:兵庫県他)
  • 五百万石 (新潟県他)
  • 美山錦 (長野県他)
  • 兵庫夢錦 (兵庫県)
  • 八反錦1号 (広島県他)
  • 雄町 (岡山県他)

酒作りにまつわる用語

  • 醪(もろみ) 仕込みタンクの中で米が発酵している状態のもの
  • 秋上がり ひと夏熟成させることで味がまろやかになり、おいしくなった酒のこと
  • 甘酒四段 醪の甘みを調整する方法のひとつ。蒸米を麹や酵素剤で糖化し甘酒を造り、それを添加する
  • 荒走り 槽(ふね)に圧力をかけず、自然にでてきた最初の酒
  • 寒仕込み 十二月から二月の寒い時期に酒を仕込むこと。雑菌が少ないなど、安定した酒造りができる
  • 利酒(ききしゅ) 酒の色や香り、味を調べる作業
  • 利猪口(ききちょこ) 酒の色味や透明度を判断できるよう、底に藍色の二重丸がついた白い陶磁器製の猪口
  • 三季醸造 夏をのぞいた秋・冬・春の三季にわたり醸造すること
  • 三増酒(さんぞうしゅ) 三倍増醸酒のこと。アルコールや糖類などの副原料を多く使った酒で、純米酒に比べ、約三倍の量になることからこう呼ばれる。清酒が不足した時代に流行した
  • 上槽(じょうそう) 醪を搾る作業。酒袋に入れて絞る方法と、機械で絞る方法がある
  • 精米歩合 米の磨き具合を示した数値
  • 千石酒屋(さんごくざかや) 一石は百八十リットル。かつて千石以上造る酒蔵を「千石酒屋」と呼び、一流と称えた
  • 特定名称酒 吟醸酒、純米酒、本醸造酒を総称した言葉
  • 破精(はぜ) 麹菌の菌糸が米に食い込んでいる状態。米全体に菌糸を食い込ませる総破精と、一部に食い込ませる突破精がある
  • 火入れ 酒に熱を加えて殺菌すること。通常、貯蔵前と瓶詰め前の二回行われる
  • 姫飯造り 米を熱湯の中に入れて溶かし、仕込む方法

焼酎の種類や特徴

Liquor

焼酎は日本で16世紀頃から造られてきた「蒸留酒」。蒸留酒とは、醸造酒を蒸留して作るお酒で「スピリッツ」ともよばれます。
お酒は、主成分の水とアルコールにその他の成分が混合したものです。
水の沸点は約100℃、アルコールの沸点は水より低く約78.325℃です。お酒を加熱して沸点の低いアルコールを先に蒸発させ、この蒸気を集めて再び液体化する事によって、もともとのお酒よりもアルコール度数が高いお酒を作る事ができます。この方法により作られたお酒が蒸留酒です。

焼酎の分類 (甲類・乙類)

焼酎は甲類と乙類の2種類に分類されます。

焼酎 甲類
原料を繰り返し蒸留してアルコールの純度を高め原料の風味を取り除いたもの。(無色無臭でアルコール分36度未満)蒸留器を連続稼働させることができるので大量生産が可能で低コスト、酎ハイなどに使われます。
焼酎 乙類
原料の芋や麦の風味を残すため、蒸留回数を1回にとどめたもの。(アルコール分45度以下)古くからの製法で造られることが多く、蔵元の特色が分かりやすいです。
原料の風味が活かされた乙類の焼酎は「本格焼酎」と表示することが認められています。
乙類の中で沖縄特産の焼酎を「泡盛」とよびます。

日本酒と焼酎の違い

日本酒は「醸造酒」で、焼酎は「蒸留酒」です。

本格焼酎の種類と特徴

本格焼酎と泡盛は、澱粉質原料(穀類、芋類)や糖質原料(黒糖、なつめやし)などを発酵させこれを単式蒸留焼酎により蒸留したものです。米焼酎、いも焼酎、麦焼酎、黒糖焼酎、蕎麦(そば)焼酎、泡盛などの種類があります。

米焼酎
米と米麹から造られる焼酎です。香りや味わいは吟醸酒に近く、比較的焼酎初心者でも気軽に楽しめる本格焼酎といえます。
熊本県人吉盆地の球磨焼酎は球磨地区で生産された米と地下水のみでつくられ、本場泡盛や壱岐焼酎、薩摩焼酎と同じく「地理的表示の産地指定」を受け国際的に高い評価を受けています。
麦焼酎
大麦と大麦麹、あるいは米麹から造られる焼酎です。
麦特有の香ばしい香りとまろやかな甘味があり癖がないのが特徴。広く知られる銘柄は、三和酒類の「いいちこ」や二階堂酒造の「二階堂」などがあります。
同じ麦からつくられるスコッチは麦焼酎と似ている部分の多いお酒です。樽で長期熟成されて樫ダルの色が移り込んで琥珀色をした麦焼酎もあり長い年月をかけた熟成酒としての楽しみ方のある本格焼酎です。
芋(いも)焼酎
さつまいもと米麹、あるいはさつまいも麹から造られる焼酎。
さつまいもの持つ特有の芳香と甘味は水・湯で割っても風味がくずれず、飲み手に良くも悪くも強い印象を残します。そこが愛好者にはたまらない魅力であり、苦手な人も多い所以です。
「本格焼酎ブーム」の火付け役となった焼酎で「3M(スリーエム)」と呼ばれる魔王(白玉醸造)、村尾(村尾酒造)、森伊蔵(森伊蔵酒造)などが有名です。
泡盛
沖縄で作られる伝統の蒸留酒である泡盛は、黒麹菌という麹菌を米に付けて造られる焼酎です。
また泡盛は、他の焼酎が発酵させた麹に原材料を投入して二次発酵を行うのに対して、泡盛は黒麹菌をタイ米に付け発酵させ、そのまま蒸留する一次仕込み・全麹仕込みという手法が用いられます。
泡盛には新酒と古酒(クース)があります。造られて三年未満のものが「新酒」、三年以上のものが「古酒(クース)」となります。蒸留から三年以上の熟成期間を置くと、泡盛は香り豊かで深い味わいとなるのです。
黒糖焼酎
黒糖焼酎は、泡盛同様に産地が限定された本格焼酎であり、黒糖(サトウキビの搾り汁を煮詰めて結晶化させたもの)を原料に米麹を使用して製造されます。甘い香りが最大の特徴ですが蒸留するので糖分はゼロ、女性にも人気の焼酎となっています。同じサトウキビから製造される蒸留酒であるラム酒に似ているともいわれます。

黒糖を使用した酒類は通常リキュール類などに該当することなどから黒糖焼酎は奄美諸島でしか生産できない特別な名産品となっています。「くろちゅう」「島酒」と親しまれています。

その他の焼酎
宮崎県のほか、長野県や北海道などで製造される「そば焼酎」。清酒を醸造する際に残ってしまう副産物「酒粕」から製造される「粕取り焼酎」。他には栗焼酎、じゃがいも焼酎、牛乳を使用した牛乳焼酎。本格焼酎ではなくなってしまいますが、しそを原料としたしそ焼酎「鍛高譚」などは有名なところです。

焼酎は悪酔いしない

アルコールは、飲酒によって体内に取り込まれると肝臓の働きによりアセトアルデヒドとよばれる物質となります。これは頭痛などの原因となる有害物質で、最終的には炭酸ガスと水に分解されます。このアセトアルデヒドが飲酒の翌日まで残ってしまった状態を二日酔い(ハングオーバー)、飲酒中にアセトアルデヒドが分解されない状態が悪酔いです。

「蒸留」という工程を経て出来上がる焼酎などの蒸留酒は、製造過程でほとんど不純物が取り除かれることと、1種類のアルコールのみで構成されています。そのことから不純物の多い赤ワインや日本酒などに比べるとアルコールを分解する肝臓にかかる負荷が小さくなります。そういった要因から焼酎は「他の酒類に比べて」二日酔いや悪酔いをしにくいと言えます。

昭和43年当時の岩手の酒

1968年に刊行された書籍「みちのく酒の旅」には、当時の素朴なお酒の楽しみ方や酒屋が旅情豊かに綴られています。その中から岩手に関する内容をご紹介してみます。

参考文献:みちのく酒の旅
(山本 祥一朗 著 1968年 サンデー新書)

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「よい米、よい水、よい技術、みがきぬかれた岩手の清酒」

古くから岩手は「日本のチベット」といわれるくらい交通の便が悪い地域でした。そんな地形のなかでも酒造りは県内の方々で行われ独自の味を育ててきました。

岩手の酒を南からたどってみると、岩手の南玄関口である一関には、ご当地の酒「関山」があります。関山はその名を平泉中尊寺にあやかってつけられたお酒です。

一関から東方の海岸方面へ、そこから北上し気仙沼を超えた陸前高田は「酔仙」という酒のふるさと。
一関から北上し平泉を超えた前沢には「岩手誉」「陸奥の友」という酒が。前沢から少し北にある水沢には「天瓢」という酒が。北上川の流れの中央に位置する北上市には「喜久盛」という酒があります。

北上と盛岡の中間にある石鳥谷には「宝峰」「稲の友」「七福神」「南部関」という酒が。
岩手県のほぼ中央に位置する石鳥谷には南部杜氏の組合があり岩手酒造りの本場となっている。

花巻から石釜の方面へいったところに遠野という町がある。遠野は柳田国男の「遠野物語」によって紹介され、日本民俗学発祥の地ともいわれています。この遠野には「国華」という酒があります。
そして石釜には「浜千鳥」という酒があります。

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石釜から海岸沿いに北上した宮古には「宮霞」という酒がある。
岩手の県庁所在地である盛岡の五銘柄「菊の司」「瑞鳳」「阿さ開」「岩手川」「観武」という酒が。

盛岡からさらにさらに北上するともともと城下町であった久慈という町がある。
古く久慈市内には「不老泉」や「鈴蘭」という酒屋が小規模でおこなわれていました。

もうひとつ久慈から南方へ下ったところの宇部に「福来」という酒があります。
茨城県にも「来福」という似た名前の酒屋があって横書きにするとよく間違われるといいます。

岩手県下の酒は、まだこの他にもところどころに散在しています。東北本線の岩手県北の福岡町の「南部美人」や、一関から陸前高田へ向かう途中の千厩にある「玉の春」などです。